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令和2年度「神戸発・優れた技術」認定企業

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製品開発ストーリー product development stories

かんたんO2タイガーは、たくさんの医療従事者のみなさまにご協力いただきました。
医療ニーズの抽出・分析を加藤博史先生(臨床工学技士・神戸大学医学部付属病院)に担当いただき、
全体のプロジェクトリーダーとして島田尚哉先生(東神戸病院・臨床工学技士)にご協力いただき、開発を進めてきました。
今回は開発の中心的役割を担っていただいたお二人に、開発ストーリーを語っていただきました。
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加藤 博史(Hiroshi Kato)
神戸大学医学部付属病院 医療技術部 副部長
臨床工学部門 技士長


部門のマネジメントと医工連携による数々の医療機器開発やDPC・NDBデータ
などの医療データと医療政策に基づいたマーケット分析・プロモーションの
企画に従事。
2019年度より内閣府の次世代医療機器開発推進協議会の構成員にも
従事している。


松島 :
加藤先生、こんにちは。今日はかんたんO2タイガーの開発ストーリーをお伺いしたいと思います。 と言っても堅苦しいことはありませんので、お気軽にお願いします。
まずはじめに臨床工学技士とはどういった職業なのか、ご説明いただけますか?
加藤 :
法律的には臨床工学技士法的に患者さんの生命を維持する、生命維持管理装置(人工呼吸、補助循環、
人工心肺、人工透析等)の操作及び保守となっていますが、昨今その範囲は広くなっていて、内視鏡等も
含めた医療機器全般の操作・保守管理・教育および、診療科の治療・処置の補助などを行っています。
また、院内の医療チーム(RST・NST・ICT・ハートチーム・早期離床リハチームなど)でも活動しており、
病院の中で縦・横・斜めと各部門をまたがり、さまざまなカタチで活動しています。
松島 :
たくさんの分野でご活躍ですね。確かに最近の加藤先生は忙しくされてます。
ところで、「かんたんO2タイガー」のニーズのきっかけとはどのようなところからきたのでしょうか?
加藤 :
酸素ボンベ運用時の代表的なインシデントはふたつあって、ひとつは酸素の元栓を開け忘れて使用してしまう
パターンです。これは使い終わった後に元栓を閉めずに手前側(流量調整器)を締めて、後から元栓を閉めた
場合、圧力計には圧力が残っているため、一見ボンベの元栓は開いているように見えます。
その状態で使用するとすぐに酸素が流れなくなります。
もうひとつは、運用中に酸素の残量が無くなってしまうケースです。
例えば、酸素の流量が多い状態で、患者さんが検査等の搬送に使用した場合、予想より時間がかかって
しまい、ボンベ内の酸素が無くなってしまって患者さんが低酸素状態になってしまう可能性があります。
このインシデントを解決したいと考えたのがニーズのきっかけです。
加藤 :
そのニーズを神戸市機械金属工業会の医療用機器開発研究会(以下、医療研)で発表しました。
医療研は一般社団法人 兵庫県臨床工学技士会(以下、兵臨工)のメンバーと企業で医療ニーズを抽出、
新製品の開発をしている医工連携団体です。

「神戸市機械金属工業会 医療用機器開発研究会」の詳しい情報はこちら


松島 :
まずは兵臨工のメンバーに協力してもらい、酸素切れのインシデントに対しての対策の必要性について
複数の施設・病棟看護師さんに アンケート行いました。
かんたんO2タイガーは「必要ない」との回答が3割程度ありましたが、アンケート結果を分析すると
整形外科・消化器科等の病棟に、そのような回答が多いことが分かりました。
日常的に低流量の酸素を使用する病棟でそのような傾向がみられることが分かったんですね。
アンケートの回答にも「無くなったら付け替えたらいい」などの回答がありました。

ただ、循環器・呼吸器・救急・ICU等の病棟では高流量の酸素を投与する重症患者が多いため看護師さんから
かんたんO2タイマーは「必要」との回答が多くありました。
このように病棟によって回答にバラツキが出ましたので途中からアンケートに回答いただいた看護師さんの
「診療科」と「経験年数」の確認を行いました。すると経験の豊富な看護師さんであればあるほど、
かんたんO2タイガーは「必要」との回答が多かったのです。

このアンケート結果から、酸素投与中の患者さんの搬送業務を分析すると、まず使用するボンベの
圧力・流用を確認し 残時間を算出して、患者さんに対して残時間に見合う準備をすることが看護師さんの
リスクアセスメントに繋がると考えました。
当初は、圧力検知方式がニーズ解決につながると考えていましたが、アンケート結果を踏まえて
圧力検知方式だと一時的にはニーズをクリアできますが、「残時間に見合う準備」が省かれているので、
ニーズに対する解決方法としては不十分であると考え、「残圧」ではなく「残時間」を出す方式に
方向転換しました。

また先ほどかんたんO2タイマーは「必要ない」と回答した酸素の流量が少ない、整形外科・消化器科等でも、これから使用するボンベを確認する計算器としての使い方にも価値があると考えています。
松島 :
加藤先生、ありがとうございます。医療ニーズの分析、そして仮設設定から評価までしっかりされているので、ニーズとしての確実度が非常に高いですね。
このお話の流れで、今回のプロジェクトリーダーの島田先生にもお話を伺いましょうか。
島田先生、こんにちは。
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島田 尚哉(Naoya Shimada)
東神戸病院 安全管理推進室 主任
看護師 臨床工学技士


看護師であり臨床工学技士であり、安全管理責任者。
それぞれの立場の視点から、医療安全に特化した医工連携での製品開発に従事。
また、医療業界に固執するのではなく、様々なジャンルの事例から切り口を変えて
医療安全に応用できる考え方や手法を柔軟に取り入れて実践。
その活動をベースにした講演会を全国各地で行っている。


島田 :
松島さん、加藤先生、こんにちは。東神戸病院の島田です。
松島 :
島田先生、お疲れ様です。早速ですが、医療安全管理者として日頃の取り組みを教えてください。
島田 :
医療事故が起こらない様、事前に医療事故を防ぐ方法の検討や対策をおこなっています。
その中でも医療事故に繋がりかねないようなヒヤッとする場面があります。
そのようなインシデントが発生した場合は文書で報告してもらい、毎朝、医療安全室のメンバーで内容の
確認を行い、実際に現場へ行って発生状況を把握し、早急な対策や現場支援など現場で必要とされている
具体的な対策を行っています。
松島 :
今回、プロジェクトリーダーとして「かんたんO2タイガー」の開発にあたり苦労した点は何でしょうか?
島田 :
かんたんO2タイガーの開発は、バラック基板→プロトタイプⅠ→プロトタイプⅡ→
現在(量産)の開発フェーズで進めました。
各フェーズごとに苦労した点はいろいろとありましたが、大きくは3つあります。

1つ目は、先ほどインシデント・アクシデントの話をしましたが、酸素ボンベの残量を
把握していない事により、酸素が無くなりそうになったもしくは、無くなってしまったことは、
実際に当院でも事例があります。

酸素残量を把握するツールがあればいいのは分かっていても、使用する方々が使いやすい仕様でないと、
使ってくれなかったり、操作ミスが起こる可能性もありますね。

そして、現場の使いやすさのみを優先して開発をすると、安全だと思っていても危険なものができるかも
しれない。逆に現場を無視して開発をすると使いものにならない製品になるかもしれない。

安全視点、現場視点、2つの異なる落としどころを製品仕様に落とし込む事が、今回一番難しかった点ですね。
島田 :
2つ目は、プロトタイプⅠを当院の臨床現場で使用・評価してもらう為に管理委員会への説得と
看護師さんへの根回しですね。臨床で使用するので信頼性が求められますし、初めて使う製品なので安全面に
懸念がありました。そこで看護師さんへ「神戸市のかんばっている企業と医工連携で開発した
プロトタイプなので、是非使って感想を教えてほしい。
万が一、現場で危険だと判断した場合はすぐに引き上げるので」と説得しました。

島田 :
3つ目は、臨床での評価結果をもとにプロトタイプⅠをブラッシュアップする際、操作を簡略化するため、
機能の「引き算」をした点です。そのなかで印象的だったのはカウントダウン中の再設定機能を捨てた点です。

我々が普段よく使用する、シリンジポンプ等の医療機器には動作中の再設定機能が付いています。
それらの機能の固定概念に引っ張られていましたので、「かんたんO2タイガー」の再設定機能を捨てるには
勇気がいりましたが、その機能を無くす事によって操作面・機能面が簡略化でき使いやすい製品になりました。

逆に「残す機能」を選ぶ点も難しかった点でした。例えば、表示画面のバックライト機能はコストが
上がるので省く事も考えたましたが、使用する場面を考えると夜間や、暗い場所での運用場面が多い事から
機能として残しました。また、カウントダウン中の電池切れは一番避けなくてはならないので、
設定時間に対して電池残量が足りない場合は設定しても「Loba」(ローバッテリ)表示が点滅して
カウントダウン出来なくなる機能は残しました。
松島 :
なるほど、現場からのフィードバックはもちろんですが、周りへの配慮など、大変だったようですね。
そんなに頑張って開発していただいた、かんたんO2タイガーの特長とは何でしょうか?
島田 :
日本医療機能評価機構が公開している医療安全情報(No.48 2010年11月 酸素残量の未確認、
No.146 2019年1月 酸素残量の確認不足)で酸素ボンベの残量不足の医療事故が報告されています。
そこでは対策として残量を事前に把握する事とされています。

かんたんO2タイガーは「残圧」ではなく「残時間」を事前に把握できますので医療安全情報の対策に基づいた

製品であると言えます。また、設定が非常に簡単で、事前に「残時間」を把握することで事前に準備が
できるのが良い点です。
「残圧」検知アラート方式ですと、精度の信頼性はありますが、流量が多いと気付いた時に
慌てないといけません。

患者さんへのアセスメントに集中してもらうためにも、看護師さんには事前に「残時間」を把握して

酸素ボンベの運用に余裕を持ってもらう必要があるかと考えてます。

あとは低価格ですね。3,900円(税別)はお試しで導入できる価格ではないでしょうか。

しかし、かんたんO2タイガーは酸素ボンベの残時間を把握するひとつのツールであって、
それだけで完璧なものではありません。

例えば保育器の搬送、重症患者の移動などより安全が求められるのシーンでは圧力警報装置と
「かんたんO2タイマー」を一緒に運用すれば、さらに安全性が向上されます。
シーンに合わせてコストと安全面の一番ベストな組合せで運用していただければ良いと思います。
松島 :
そうですね。私もこのかんたんO2タイガーの開発に携わらせていただいて、たくさん勉強になりました。
お二方ともありがとうございました。
□共同開発団体□(敬称略・順不同)
 一般財団法人神戸市機械金属研究会
 医療用機器開発研究会
 兵庫県臨床工学技士会
 新和工業株式会社

□開発にご協力いただいた臨床工学技士の方々□(敬称略・順不同)
 東神戸病院 島田 尚哉 様(プロジェクトリーダー)
 神戸大学医学部附属病院 加藤 博史 様(ニーズ発信・分析)
 神戸市立医療センター中央市民病院 吉田 哲也 様
 姫路赤十字病院 三井 友成 様
 明石市立市民病院 中村 拓生 様
 神戸市立西神戸医療センター 岸本 和昌 様
 神戸赤十字病院 藤岡 惠奈 様

販売代理店

かんたんO2タイガーは、ライフメッド株式会社にて取扱っております。こちらからご購入ください。

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